1200×1200dpiの解像度を持つシングルパス・インクジェットプリンター「Jet Press」の開発でさまざまなトラブルを経験した富士フイルムの技術者が、試行錯誤の中でわかった技術課題と対策についてご紹介します。
本記事の「3つのポイント」
- 見過ごされがちだが、インク供給ユニットがスジ・ムラの原因になりうる!
- インク供給を適切に行う際のポイントは、「異物」「気泡」「インク温度」「メニスカスの状態」
- インク供給ユニットを用いてプリントヘッドを安定的に使いこなすことが重要
本シリーズでは、これまで、「スジ・ムラの体系的な分析方法」をはじめ、スジ・ムラの原因として「プリントヘッドのクリーニング」、「搬送・振動」、「画像検査装置」を挙げ、それぞれの対策方法をご紹介してきました。
今回は、プリントヘッドにインクを供給する「インク供給ユニット」により起こるスジ・ムラとその対策方法をご紹介します。
「適切なインク供給」、できていますか?
1回の印刷(1ジョブ)で数百枚~数千枚印刷している最中に発生し始めるスジ・ムラや、装置を設置して数カ月~数年経過してから発生し始めるスジ・ムラで悩まれた経験はありませんか?その場合、プリントヘッドが劣化してしまったからだと諦めていませんか?
そのスジ・ムラの原因は、プリントヘッドではなく、インク供給ユニットにあるかもしれません。実際に、Jet Pressの開発において、インク供給ユニットの改良でスジ・ムラを改善した経験があります。
インク供給ユニットに要求される主要な機能は、プリントヘッド内に安定してインクを供給し、プリントヘッド内のインクを適切な状態に保つことです。
特に、高解像度・高画質の画像を目指すほど、下記に挙げた4つのポイントが重要になります。
インク供給ユニットに要求される4つの機能
- 異物の除去と異物発生の抑制
- 気泡対策
- インク温度の制御
- ノズルにおけるメニスカスの制御
Jet Pressにおいても、上記4点に注意した設計を行ってきました。
では、次のページから、Jet Pressで発生したトラブルや、インク供給ユニットで注意すべき具体例について見てみましょう。