インク循環制御方式の正しい選定は高画質実現の第一歩

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インク循環をアクティブに制御することで、安定した循環を実現する

(1)アクティブ制御方式、(2)パッシブ制御方式、それぞれのインク循環の特徴について詳しく見ていきます。

(1)アクティブ制御方式
アクティブ制御方式とは、循環部分の圧力を観測し、その圧力変動に応じてポンプを制御する方式です(図2)。ポンプの制御を通じてインクの圧力を制御できるため、印刷中の圧力変動を抑制できるようになります(以前の記事を参照)。このため、圧力変動に伴い発生する印刷物上の濃度ムラやスジの発生を抑制できます。

一方で、欠点としては、圧力変動に対して精度よく制御を行うため、制御内容が複雑になり制御の難易度が高くなることや、ポンプなどの駆動機構や追加のセンサが必要になるなど構造が複雑化することで、装置コストが高くなることが挙げられます。

アクティブ制御方式(ポンプ方式)
図2 アクティブ制御方式(ポンプ方式)

(2)パッシブ制御方式
パッシブ制御方式は、予め設定した循環パラメータに応じてインク循環を制御する方式です。
パッシブ制御方式の代表である水頭差方式を例に説明します(図3)。

水頭差方式を用いた循環式インク循環では、供給側と回収側のインク液面高さを制御することで、揚程差(供給側タンクと回収側タンクの高さの差)を利用してインク循環します。液面の高さのみが重要な値であるため、液面を一定に保つための液面センサやポンプが必要であるものの、吐出時の圧力変動を観測するためのセンサや、圧力変動に応じた制御を行うポンプなどの制御機構が不要なため、省スペースかつ低コストでインクを循環することが可能です。

一方で、積極的に圧力変動を抑制する制御を行わないため、大量のインクを吐出する場合や高速印刷を行う場合には、圧力変動に対して応答が遅れてしまうので、アクティブ方式に比べて、印刷物上に濃度ムラやスジが発生しやすいというデメリットがあります。

パッシブ制御方式(水頭差方式)
図3 パッシブ制御方式(水頭差方式)

このように両方式にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、印刷機に求められる性能に応じて方式を選択する必要があります。特に高速で高精度の印刷品質を確保するためには、アクティブ制御が望ましいといえます。

圧力変動抑制だけじゃない?!アクティブ制御のメリット

アクティブ制御を採用するメリットは、圧力変動の抑制だけではありません。インク循環に求められる機能の一つである「気泡対応」にもメリットがあります。
例えば、プリントヘッド面のクリーニング時やプリントヘッド交換時に、プリントヘッド内に気泡が混入した場合を考えてみましょう(図4)。
プリントヘッド内の流路は数十μm程度の場合が多く、このような狭い空間に気泡が混入してしまうと、気泡が流路に詰まり、この状態で印刷すると印刷物上にスジが発生します。アクティブ制御方式のインク循環ユニットを用いると、ポンプなどの駆動機構を働かせることで積極的に気泡を含んだインクを排出し、スジの発生を解消することができます。
さらに、素早く気泡を排出することが、装置のダウンタイム低減にくわえ、装置設置時やプリントヘッド交換時のインク充填時間の短縮により、装置の立ち上げの迅速化にもつながります。

加圧パージによる気泡の強制排出のイメージ図
図4 加圧パージによる気泡の強制排出のイメージ図

アクティブ制御は装置ごとに最適化が必要

ここまで紹介したように、アクティブ制御方式のインク循環を使いこなすことで、印刷機の性能を最大限に発揮することが可能となります。しかし、使いこなすためには、各装置に最適化した制御を行う必要があります。印刷速度や最大吐出量、印刷解像度など、多岐にわたる条件を最適化することは容易ではありません。

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