印刷基材起因のトラブルを回避して「実効生産性」を高める方法

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印刷基材起因のトラブルを回避して「実効生産性」を高める方法

不良印刷基材の検知とプリントヘッドの退避が重要!!

印刷基材起因のトラブルを回避し、装置の実効生産性を高めるためのポイントを3つご紹介します。

ポイント1:重度のトラブルをなくそう!

最初に回避すべきは、プリントヘッドに回復不可能なダメージを与える重度のトラブルです。プリントヘッドの交換が発生すると、交換作業だけでなく、交換後に吐出タイミングや吐出滴量の調整作業も必要となるためです。

プリントヘッドの交換を発生させないためには、プリントヘッドに接触する危険がある印刷基材の不良箇所をプリントヘッドに到達する前に検知し、印刷基材の搬送を停止することが有効です。重度のトラブルにつながる印刷基材の不良個所の例としては、紙端の折れ、紙上に付着した付箋、紙が破れてくしゃくしゃに折れ重なったものなどが挙げられます。

印刷基材上の不良箇所を検知するイメージ画像
図3 印刷基材上の不良箇所を検知

ポイント2:軽度のトラブルは影響を最小限に!

ここでいう軽度のトラブルとは、「プリントヘッドに回復不可能なダメージを与えないもの」のことを指します。
軽度のトラブルにつながる印刷基材の不良の例としては、紙のしわや波打ちなどといった微小な浮きが挙げられます。
浮きの量が小さい場合は、紙の搬送は止めずに、それがプリントヘッドに到達する前に、プリントバーを紙から離れる方向に退避させる方法が有効です。そうすることで、数枚の損紙だけで印刷を継続できます。それに対し、装置を止めてしまうと、損紙の発生のみならず、残留紙の排出やプリントバーの移動などによって数分の時間ロスが発生します。

プリントバーを印刷基材の不良箇所から退避のイメージ画像
図4 プリントバーを印刷基材の不良箇所から退避

ポイント3:吐出性を保ちつつプリントバーを退避する!

ポイント2でプリントバーを印刷基材の不良箇所から退避することで時間のロスを削減できることを示しましたが、プリントバーの退避・復帰方法にもポイントがあります。
不良箇所との衝突を回避できるように、プリントバーを退避する際の加速度を決める必要がありますが、この加速度が大きすぎると、ノズルにおけるインク面のメニスカスが壊れてしまいます(図5)。すると、プリントバーを印刷位置に復帰させて印刷を再開しても、スジなどの画質トラブルが印刷物に発生します。

加速度が大きいとメニスカスが壊れてしまう様子のイメージ画像
図5 加速度が大きいとメニスカスが壊れてしまう

一方で、加速度を小さくし、それでもプリントバーが不良箇所を回避できるように時間を取るべく、基材不良を検知するセンサとプリントバーとの距離を長くすると、センサとプリントバーとの間で印刷基材が変形して不良が発生した場合に検知できないため、プリントバーに衝突します。

印刷基材の不良箇所との衝突を防止しつつ良好な吐出性を保てるように、求められる性能に応じてプリントバーの退避・復帰時の加速度を適切に決めることが必要です。

用紙浮きセンサとプリントバー昇降ユニットでプリントバーの保護を実現

富士フイルムでもJet Pressの開発時に、印刷基材とプリントヘッドとの接触を防止する技術の確立に数年を費やしました。
例えば、印刷基材の不良を単に検知するだけではなく、その不良が重度のトラブルにつながるものなのか、軽度のトラブルで済むものなのかの判定には高精度の検知性能が求められました。

また、軽度のトラブルで済むと判定し、プリントバーを退避する場合には、インクジェット吐出と、印刷基材の搬送との間で、複雑な連携制御が必要です。
例えば、図6のような画像を作成する場合をみてみましょう。

印刷したい画像のイメージ図
図6 印刷したい画像

図7のように、1枚目の印刷基材に対してKCM色の印刷が完了しており、Y色もあと少しで印刷が完了するという時に、センサが2枚目の不良を検知した場合、全てのプリントバーを一斉に退避すると、1枚目も損紙になります。

全色のプリントバーを一斉に退避する場合のイメージ画像
図7 全色のプリントバーを一斉に退避する場合

一方、図8のように、プリントバーの退避タイミングを独立に制御すると、1枚目の印刷基材を損紙にせずに済み、実効生産性の低下を抑制できます。

全色のプリントバーを一斉に退避する場合のイメージ図
図8 各色のプリントバーの退避タイミングを独立に制御する場合

しかし、このような制御には、どの色のプリントバーでその用紙への印刷が完了しているのか、それとも不完全な状態で印刷が終了したのか(どの色のプリントバーが退避したのか)などの緻密な制御・判定が必要であり、ソフトウェアのアルゴリズムも複雑なものになります。

富士フイルムは、これらの経験で得た知見・技術を整理し、高解像度シングルパス・インクジェットプリンター開発に取り組む方にご利用いただける、インクジェットコンポーネント製品「Samba JPC」を提供しています。さらに、Samba JPCを活用するためのインテグレーション支援も行っております。

例えば、Samba JPCでは「用紙浮きセンサ」をコンポーネントの一つとしてラインアップしています。用紙浮きセンサを用いると、プリントヘッドに接触する恐れのある、紙破れ、紙端の折れ、しわ、紙の波打ちなどの種々の検知が可能です。

用紙浮きセンサのイメージ図
図9 用紙浮きセンサ

さらに、用紙浮きセンサで印刷基材の不良を検知した際に、プリントバーを退避できる「プリントバー昇降ユニット」も提供しています。

プリントバーを印刷基材の不良から退避するイメージ図
図10 プリントバーを印刷基材の不良から退避

「Samba JPC」を通じて私たちの知見・技術を活用いただき、御社の開発を効率化することで、プリンティングのデジタル化を一緒にリードし、インクジェット市場の拡大と発展に寄与したいと考えています。ぜひご利用ください。


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