主なプリントヘッドクリーニングの方式は?
インクジェットプリンターの代表的なヘッドクリーニング方式とそれぞれのメリット・デメリットを表2に示します。
各方式の特性を理解した上で、最適なものを選択することが重要です。
方式名 | 概要 | メリット | デメリットorリスク |
パージ |
加圧によりインクをノズルから押し出すことで、増粘したインクやインク内の気泡を排出し、フレッシュなインクに入れ替える | 最も簡単で汎用性が高い |
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ブレードワイプ |
ゴムブレードで擦ることでノズル面上の異物を除去する | 簡易な構成で安価に作れる |
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吸引 |
ノズル内のインクを吸引する (ヘッド外に吸い出すタイプとヘッド内に引き込むタイプあり) |
ノズル面を傷つけにくい |
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洗浄 | ノズル面に洗浄液を付与し、ノズル面に付着したインクを洗浄液で洗い流す (超音波を使用する方式もある) |
ノズル面を傷つけにくい |
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ドライウェブ |
ノズル面を乾いた不織布などで払拭する | ノズル面で固化・付着したインクでも除去しやすい |
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ウェットウェブ | 洗浄液を付与した不織布などでノズル面を払拭する |
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ウェブや洗浄液などのランニングコストがかかる |
これらは併用することも可能です。適切に選択すれば高い効果を見込めますので、コストを考慮しながら選択することが望ましいです。
クリーニング方式の違いによるプリントヘッドの吐出性の経時変化例
富士フイルムでは、表2の中のある方式から用途に応じて、最適な方式を選択したり複数の方式を組み合わせたりすることで、プリントヘッドの吐出性を数倍長く保つことに成功しました(図1。代表指標については、以前の記事をご参照ください)。
ここで、「用途に応じた最適な方式の選択」とは、例えば、プリントヘッド表面を傷つけやすい材料を含んだインクを使用する場合は、ノズル面を傷つけにくい洗浄方法を、それ以外のインクの場合はウェットウェブ方式を採用することなど、を意味します。
さまざまな評価で問題を特定。しかし、最適化には多大な開発期間とコストが必要
適切なクリーニングシステムを実現するためには、表2で挙げた各クリーニング方式の特性を踏まえたうえで、適切な評価手段を用いて、問題を理解することが必要です。
評価手段としては、例えば、カメラ等でクリーニング前後のノズル面を撮影し解析する方法は、基本的ですが大変有効です。
なぜなら、クリーニングに用いた洗浄液がノズル近傍に残留する、ノズルからインクを引き出してしまうといった現象を、直接、確認できるからです。
より強力な評価方法として、光学顕微鏡やSEMなどによるノズルの拡大観察も有効です。それにより、例えば、ノズル近傍にクリーニング起因の傷が発生していないか、ノズル内部にインクの固着がないか、などの詳細な評価が可能です。そして、もちろん、以前の記事でご紹介したように、吐出性に関する代表指標を決めて、吐出状態を定量的に把握することが重要です。
しかし、このような最適化には多大な開発期間・コストを伴います。
富士フイルムでは、プリントヘッドのクリーニングユニットはもちろんのこと、高生産なシングルパス・インクジェットプリンターの長期性能維持に最適化されたコンポーネントとしてSamba JPCをご提供しています。開発でお困りのことや疑問などがあれば、どのようなことでも構いませんので、下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。
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